運動の質へのフォーカス

 改善させるべき状態は「運動の質である」と前回のブログで申し上げました。以前回復期病棟で働いていた時のお話しです。回復期病棟では患者さんがどのくらい改善し、退院していったかで病院の収益が変わってきます。このどのくらい改善したかということを、日常生活の自立度を指標に判断いたします。

理学療法士は医師や看護師、介護士といったチームと患者さんの現状と予後を共有しながら、ケアにあたっていきます。その共通言語しての役割として日常生活の自立度が使われるのです。

短縮される入院期間と回復の指標が日常生活の自立度となるということで、現場はどのようなことになったでしょう。脳卒中の場合を例に出すと、発症部位や発症前の状況など状態は様々ですが、一般的に麻痺した上肢の予後は不良です。この場合治療としての選択はどのようになるでしょうか。一つは利き手が麻痺した方であれば、利き手交換を行うことです。そうすれば最初は不憫ですが、食事や書字などが一人で行えるようになります。麻痺した上肢の回復に時間を割くのではなく、こうした実生活への対応を促すリハビリが主体になるはずです。手の改善はとてもシビアで、改善の指標として日常生活の自立度として拾える程ではない場合がほとんどなのです。

利き手交換が良いとか機能改善に終始すべきとか、どちらが正しいといっているのではなく、もちろんどちらも正しいと思います。患者さんの価値観も加味されて判断される事だと思います。ただやはり自分としては麻痺した手の回復が見込めなくとも、積極的に麻痺した上肢への治療は進めていくべきと思います。治療と言っても、麻痺した手の筋力をつけるとか硬くならない様に、曲げ伸ばしをたくさんするといっているのではありません。

再度申し上げますが、運動の量でなく運動の質を変えていくのです。運動の質を変えるためとは極端にいうと、今までの生き方を変えると言い換えることも出来ます。大げさと思われるかもしれませんが、人間は今まで生きて培った思考や物事に対する反応など、例え大きなコンプレックスを持っていたとしても変えようとはしないはずです。運動においても同様でバランス反応などは本来、人それぞれですが例え効率の悪いバランス反応でも今まで行ってきた経験を重視するはずです。(今まで不都合はあっても生きてこれたという実績がある。)

運動の質の輪郭が見え始めてきたところで、更に次回でも多角的に運動の質をお話ししていきたいと思います。

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